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助成金を使って北海道へ ①

私は旅行が好きです。会社の社員旅行がことの始まりでした。
確か、少しの積み立てと会社の負担だったと思う、北海道へ行った。その時生まれて初めて飛行機に乗り、雲の上を飛んで気を失ってしまった。なぜそうなったのかはわからないが、雲の上にのぼって、すごい!キレイ!まぶしい!を連発してその後の記憶がなく、ハッと我に返った時に、あれ?今なにをしていたんだろう?となった。
その頃は今のようにインターネットがまだ普及していなかった時代、北海道は夏でも寒い、時計台は必見、みそラーメンが凄く美味しい、すすきのは女性でも楽しめるところがある、食べるものはやっぱり海のものだよね、となんとも大雑把な感覚(すごく調べました)で、今、ここのこのラーメンが美味しい、このスイーツが絶品、時計台は街中にあってそれほどでもない、なんて詳細な情報はありませんでした。
それでも二度と来られないかも知れないと思うと、全てやってみたいと飲んで食べて満腹のお腹を弾ませながら、夜ラーメンに…同行した同僚に呆れられてしまいました。
だって二度と……という話を夫にしたら、“そんなことない”“何度でも行く”と何かに火が着いたらしく、それからは個人旅行、社員旅行も含めて“えっまた行くの?”と言われるくらい北海道を旅した。
夫が鉄道オタクだったのもあって、もう臨時でしか走らないらしい北斗星にも数回乗せてもらった。

今は夫もいなくなり、昔ほどでかけなくなってしまったが、旅行検索サイトをちょくちょくチェックしている。
2年ほど前、“助成金を使って北海道へ”に惹かれた。
飛行機代片道1万円、往復だと2万円の補助がでるのだ。
オホーツク紋別空港を利用して、その周辺の指定市の宿に宿泊することが条件で、早割などにも適用される。とすると一番高い時期をはずせば、土曜日出発でも18,000円前後となり、さらに補助がでるから片道8,000円で行ける計算だ。往復16,000円、こうなったら宿泊だって民宿、北海道だからどこでも食べるものは美味しいだろうと、とことん安く旅行しようと計画した。
宿は雄武町というところの民宿、食事に何か地のもの、牡蠣などをと思って電話予約した際に尋ねたら、今は漁をする時期ではないので手に入るかどうか…の返事。そうだよね?よくよく調べるとだれかのブログに春にウニ三昧をしたというのが載っていた。
でも、幸い一緒に行ってくれる相棒(M)も見つかり、1月の寒い中の旅行で予約した。

当日、車で羽田まで。1日1便しかないのだが少しゆっくりの出発なので、気持ちものんびり…が悪い癖なのだ。高速が渋滞している。しかたなく、途中まで下道で行くことにした。途中から下道も混んでいる。ん?ドキドキしてきた。なんで余裕を持てないのだろうと今反省してもしかたがないので、最悪のケースを考えることにした。もう間に合わないので、羽田スイーツをして家に帰るか、ええいままよと別の何処かに行ってしまうか……。
でもしばらくしたら何があったか知らないが、途中からグングン走り出した。お陰で羽田に出発時刻の45分前には着いたと思う。自動チェックインして、ヒトゴコチついたら、お腹が空いてきたのと、Mが一服したいということで、ちょこっと休むことにした。今はもうどの店も禁煙なので、喫煙所まで出かけていく。私はふ?っと椅子に腰掛け時計を見る、えっもう出発時刻の20分前!(懲りない奴らなんです・・・)Mに急いで携帯で連絡をとり、注文したホットドッグを口にほおばり、走ってゲートへ向かう。もう10分前、なんとか間にあった!と思ったら、チェックインしたつもりがチェックインされていなかった!のでここでアウト。(ここまでTCHAT7号掲載)

ツアー以外はいつも相手に頼りっぱなしなので、こんなところでつまずく私……
次の便はないし、宿は予約しているし、紋別空港でレンタカーも予約しているし。何とか北海道へ行ってその後は列車を使って移動するとか出来ないものかとカウンターで相談。すると千歳から紋別へ行ける列車があって2時間位との返事、もう千歳に行くしかないと飛行機に飛び乗りました。
Mと良かったね?どうにかなったね?などと飛行機の中で話をしている途中、“いやまてよ、千歳から紋別まで飛行機を使うのに、電車で2時間はないっしょ”とフツフツと沸いてくる疑問。

怖くてMに言えない……北海道に着いてからなんてもっと言えない…いつ?いまでしょ!とばかり切り出した。Mは携帯で色々調べて、最後は女だけど男前の返事、“ここまで来たのだから、向こうに着いてから行動を起こそう”

千歳空港、降り立つと悪天候の猛吹雪。千歳から紋別への飛行機を調べるが、常時運行してはおらず、レンタカーのカウンターでは悪天候のため紋別へ向かう道路もそこかしこで閉鎖という情報。列車で2時間という紋別、レンタカーの若い女性に聞いてみた。一所懸命地図を開き、あちらこちらへ電話して調べてくれた結果、全く逆方向の登別の先、昭和新山の近くの伊達紋別であることが判明。一瞬羽田の空港職員を“バカヤロー”と心で叫んだが、もともと自分が悪い。皆さん丁寧に最良の答えを出してくださっているのだ。

千歳にいても仕方がない、札幌に出て別の方法(例えば稚内に行き、そこからレンタカーでとか、ちょっと考えれば無理に決まっているのに)を見つけようと札幌行きの快速に乗った。
列車の中で色々考えて、もう紋別はあきらめようとMと話しをしていると、宿泊の予約をしていた民宿や飲み屋(飲み屋まで予約していた!)から、立て続けに電話があり、紋別空港から途中道路が、吹雪のため通行止めになってしまっているので無理してくることはない、暖かくなったら来なさいよと心が温かくなる連絡!
日を改めて絶対に行くぞ!と心に誓いました。

ひとやま越えればまた山が、札幌に着き、まず宿を確保。列車時刻も通常ではあり得ない遅れが出ているほどの吹雪だったので、空きを探すもなかなか見つからず、札幌駅から離れたホテルに。ホテル到着後すぐに帰りの飛行機の手配。ずーっと繋がらず、お手上げ状態の私に代わって、Mがカード会社から連絡をとり、帰りの飛行機もゲット。なんて頼もしいのでしょう!
やれやれ、では北海道を楽しもうではないか!Mは、サッポロビール園に行った事がなかったので、そこに決め電話予約した。地下鉄を使って出かけようとホテルの玄関に向かうと、出発直前のホテルのバスがちょこんと停まっているではないか!
二人で、これに乗れば駅に着くと信じこみ、行き先も見ずに乗り込む。
バスはすぐに出発。途中ホテルに立ち寄り、客を乗せ、また出発。どんどんと灯りが少なくなってくる…高い建物が無くなってくる……
『運転手さんに聞こうか』『なんて聞く?』『どこ行きですかって』
……返ってきた返事は○○リゾート○○。これは駅ではない、駅から遠く離れた何処かだ……
「すみません…途中で降ろしてください」
「じゃ信号のところで停めるから」
右も左もわからない場所、タクシーもなかなか通ってくれない。少し歩くと市電の停留所が見えてきた。そこで待っていた方に教えてもらい、駅へと向かう。
何とかビール園にたどりつき、ジンギスカンを満喫して一日を終了しました。

あれから一年、懲りもせず旅行サイトを見ていたら、またも“助成金を使って北海道へ”の文字が!この制度を継続しているらしい。
心の中でワクワクしているけれど、Mはもう誘っても行ってくれないだろう。

 

匿名希望さん

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